啓蟄。
「やあ、蛇。ぼくのごちそうになる気はないかい?」
「おはよう、針鼠。ずいぶん旨そうなツラをしてるね」
そんな会話を交わして、針鼠は蛇を、蛇は針鼠を食べようとした。
が、お互いがお互いを食おうというのだから、これがうまくいくわけはないのだ。
「まず、オレがお前を食べるよ、針鼠」
「いいや、ぼくが先だよ、蛇」
喧喧囂囂。
針鼠は困っていた。蛇が絡まって解けないのだ。
蛇もまた困っていた。針鼠が刺さって動けないのだ。
多くの獣や鳥が見ていたが、誰も二人を解き外す術を知らない。