2011年5月23日月曜日

黒焦げになった鶏

腹の減った男と、寒さに耐えかねた女が、鶏の小屋に火を点けることを思いついたのだ。
その鶏小屋には、雌鳥と雄鶏が慎ましく、喧しく(特に朝は)暮らしていた。
ごく当たり前の鶏小屋だった。

腹の減った男は、マッチを持っていた。寒さに耐えかねた女は、塩胡椒を持っていた。
だから、鶏小屋に火の点いたマッチを投げ入れることは、とてもよい案だと二人は思った。
だが、結局、小屋には暖まるほどの炎は上がらず、プスプスと煤が出るばかりだった。
煤で黒くなった鶏が怒って小屋から出てくると、「黒焦げになった鶏のゾンビが出てきた」と男は腰を抜かし、女はますます震えあがった。
二人は、鶏小屋を解体して焚き火をし、雌鳥が仕方なく産んだ卵で目玉焼きを作って、塩胡椒を振って食べた。卵も煤けていた。
「卵を分けてくれ」と頼みに来れば、それでよかったのに、と雄鶏は一晩中説教をした。