超短編
愛用の印泥の容れ物には鳳凰が描かれている。妙に躍動感のある鳳凰が気に入って求めたのだった。時々、鳳凰の格好が違って見えるが、前の様子を具に憶えているわけでもない。最近になり、落款の周りに鳥の足跡のような汚れが付くようになった。そのうち私の印泥から飛び去ってしまう気がしてならない。(140字)