超短編
朝日の射し込む部屋でスピーカーのコーンが力強く跳ねている。徹夜で作った曲のはずだが、何かがおかしい。スピーカーから繰り出される重低音の激しいリズムに撃たれ、立っていられなくなった。寝転がると徐々にリズムは緩やかになり、私のようで私ではない美しい歌声に包まれていく。音楽に眠らされる(140字)
庭に埋められ空襲を逃れたという重箱に、おせちを詰めていく。かれこれ百年経つ筈だが、欠けも剥げもなく見事に四角い。だが今年、同じ寸法で一段だけ誂えた。やはり与の段で菜箸が止まる。盛り付けようとすると煮しめの人参が、蓮根が、弾かれ宙を舞う。飛翔人参は華麗に新重箱に着地した。拍手喝采。(140字)