カラフルなバスも、かっこいい文字が並んだ看板も、きれいな写真がいっぱいのチラシも、すべて「広告」というものだと知ってしまった子は、世界に心底がっかりした。今夜も、チラシで折った紙飛行機から夜の町に真っ白なペンキを撒いて、白くなった町にクレヨンで大きな鳥の絵を描く夢を見ている。
2024年1月22日月曜日
2024年1月13日土曜日
#冬の星々140字小説コンテスト投稿作 「広」投稿作
子供の頃に住んでいた町には広場があった。小さな時計台があり、フィドル弾きが鳩や猫を相手に演奏していた。古い郵便ポストがポツンと淋しそうにしていたから、よく手紙を出した。書ける文字は少しだけ。切手も貼っていない。その手紙が60年を経て届いた。孫が喜び、返事を書くんだと張り切っている。
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予選通過
2024年1月8日月曜日
#冬の星々140字小説コンテスト投稿作 「広」投稿作
往来で文字通り大風呂敷を広げている人がいる。警官に注意されても気にする様子はない。口上を述べるが異国の言葉なのか、聞き取れない。最後に風呂敷に飛び込み、吸い込まれた。大風呂敷は軽やかに宙に舞い、電線に絡み付き停電が起きた。大風呂敷に消えた人を案ずる者が一人でもいればよいのだが。
2024年1月4日木曜日
果実戯談 パイナップル
パイナップルの飛行性能を人類はやっと活かせるようになった。若者は自由に乗りこなし、老人もパイナップルを抱きしめて飛び回り始めた。抱かれたパイナップルは照れくさいのかトゲトゲしくぶっきら棒な飛びっぷりになるが、その分おいしくなることを酸いも甘いも噛み分けた老人たちはよく心得ている。
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