小法師が起き上がれなくなった。弥次郎兵衛は助けようとするが「おぬしのほうが均衡を保つのは難儀だ」と遠慮する。先刻まで二人でのんびりユラユラしていたのに。右目から涙が溢れ、体が傾く。そこへ木枯しが吹いたので、グラグラと大きく揺れて弥次郎兵衛も倒れた。枯れ葉が二人の上に舞い落ちる。
2022年11月21日月曜日
2022年11月10日木曜日
#11月の星々 「保」投稿作
白くてふわふわの卵が美しく装飾された保育器の中で眠っている。わたしが産んだのだ。こんなにやわらかなのに強烈な痛みを伴った。「本当に育つのかな……」哺乳類のはずのわたしが卵を産んだ理由はわからない。医者が言う。「初めに鼻が出てくるでしょう」夫は頷く。たまごがぽにょんと伸びをした。
2022年11月9日水曜日
#11月の星々 「保」投稿作
静寂の部屋に振子、大小の歯車、動かない鳩。そして大量の時計。「ここは何だ?」と聞くと「宇宙保時室。時間を見張っている」 「見張りを止めるとどうなる?」 「時は動きを止める」 「ウソつきめ」 時間泥棒ロボの背中から竜頭を引っこ抜いた。チクタク音、時が息を吹き返したのだ。鳩も飛び去った。
2022年11月7日月曜日
#11月の星々 「保」投稿作
極小カメレオンが揺れる葉の上でポーズを取る。完璧な保護色に満足しているが、葉が妙に不安定なのが気にいらない。 コノハウオは擽ったい。水流がおかしいと思っているが、それはカメレオンが動くせいだ。 カメレオンが水に落ちたのか、コノハウオが空中に飛び出したのか。見ていたのはお月さまだけ。
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