願譚 182

 焚書の灰でできた埋め立て島に世界一の図書館を建てたい。

指先アクロバティック

　左手の小指、爪の伸びたところが、パキッと音を立てた。久しぶりの感触だ。そのまま指も縦に割れていき、一つ目の関節まで着た頃に薬指が割れ始める。じわじわと根本まで割れて2本になった左手薬指だが、結婚指輪には影響がない。
　そうこうするうちに左手右手すべての指が2本に分かれて、つまり20本指となる。ひらひらと20の指を動かす。どれも違和感なく動かせる。ピアノも弾けるし、折り紙も折れる。
　けれど、20本指は長持ちしない。せっかく2本に分かれた指は5分もしないうちに1本にくっついてしまう。今度は音もなく、あっという間に。指をめちゃくちゃに動かして抵抗してみても、甲斐はない。あっさりと10本指に戻ってしまう。
　本当は20本の指で次々とあやとりをして見せて、あなたを惑わせたいのに。

願譚 181

「なめらかな雨と、すべらかな雨、どちらがお好みですか」と、てるてる坊主に問われたい。

願譚 180

筆記するそばから濃さも太さも色も変わる気まぐれな鉛筆で会えない人に手紙を書きたい。

願譚 179

 少しだけ大きな右足に合わせて、靴や靴下を5㎜大きくする魔法を覚えたい。

願譚 178

 キリンの脚の樹の林でバードウォッチングをしたい。