懸恋-keren-
超短編
2018年4月16日月曜日
箱を開けると3
ぽこぽこと歩く箱が部屋に現れたので、猫と追い掛け回した。
猫が勢い余って潰してしまうことを恐れたが、箱は猫の手をうまく逃れ、ぽこぽこぽこぽこ歩く。
「はこー、ちょっと待ってー」
ぽこ。箱が立ち止まる。
「あなたには何が入っているの?」
ぽこぽこぽこぽこ。箱が逃げる。
ようやく追い詰めて、箱を捕まえると、おとなしくしている。
蓋を開けると、「ぽこぽこ」が入っていた。
2018年4月9日月曜日
箱を開けると2
テーブルの上にリボンを掛けた箱が用意されている。
箱の中は、私の誕生日ケーキ。
リボンを解き、箱を開けると、新築したばかりの我が家にそっくりのケーキが現れた。
ナイフを入れるのに、やや躊躇するがこのままでは食べられない。
ナイフを当て、えいっと力を入れると、バリバリと天井から不穏な音が聞こえてきた。
私もまたケーキの中にいる。
2018年4月8日日曜日
箱を開けると1
小さな小さな箱である。
爪の先を使ってやっと開けると桜の花びらが一枚、窮屈そうに入っていた。
棚には同じ大きさの箱が十八個並んでいる。十九個目を隣に置いた。
「いつか助けた桜からの便り」と言いたいところだが、実のところ、なぜ毎年届くか、わからないのだ。
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