手押しポンプをいくら押しても、耳障りな金属の軋みが聞こえるだけだ。
「もう、その井戸は枯れているよ」と、兄が言う。もう三十回くらい言っている。
「わかってるよ」と、これも三十回くらい答えている。
兄の口調は一回目も三十回目ものんびりしたものだったけれど、私は自分の声がだんだんと刺々しくなっていることに気が付いている。
日が沈んでも、私は手押しポンプを押し続けていた。もちろん水は一滴も出ない。
けれどポンプを押したときの軋んだ音は、少し、ほんの少しずつ変わってきている。確かに。痛みに耐えるような、大勢の人たちの声。
「もう、その井戸は枯れているよ」兄の声が、ほんの少し震え始める。
「わかっているよ」私は声が弾むのを抑えられない。
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500文字の心臓 第154回タイトル競作
〇10 △1 正選王
実に7年ぶりの投稿、10年ぶり二回目の正選王
2017年3月17日金曜日
2017年3月15日水曜日
2017年3月11日土曜日
2017年3月4日土曜日
三月四日 ぐるり
新しくできたという雑貨屋を探しに行った。今日は定休日だということは承知していたが、どんな店か偵察してみようという魂胆である。雑貨屋には怪しい店や妖しい店があるからに。
「森林薬局」のところを曲がって、裏道へ入る。そうチラシに書いてあったので、「森林薬局」のところを曲がって、裏道へ入る。裏道を入ったところに「いがらし歯科医院」があった。覚えやすい。ここを目印としよう。
「いがらし歯科医院」のところを通り過ぎると、また「森林薬局」があった。ここには「しらがい歯科医院」がある。「白貝」珍しい名前だ。裏道へ入る。
キョロキョロ見回しながら歩くが、雑貨屋らしきものはない。ただの裏道だ。そのまま裏道を歩くと大通りに出た。左を向くと「森林薬局」。
これは、妖しいほうの雑貨屋のようだ。
「森林薬局」のところを曲がって、裏道へ入る。そうチラシに書いてあったので、「森林薬局」のところを曲がって、裏道へ入る。裏道を入ったところに「いがらし歯科医院」があった。覚えやすい。ここを目印としよう。
「いがらし歯科医院」のところを通り過ぎると、また「森林薬局」があった。ここには「しらがい歯科医院」がある。「白貝」珍しい名前だ。裏道へ入る。
キョロキョロ見回しながら歩くが、雑貨屋らしきものはない。ただの裏道だ。そのまま裏道を歩くと大通りに出た。左を向くと「森林薬局」。
これは、妖しいほうの雑貨屋のようだ。
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