懸恋-keren-
超短編
2015年11月20日金曜日
眠る森と眠れない姫君
日が沈み、月が昇る。月明かりを浴びた栗鼠は、たちまち眠ってしまった。さっきまでの疾走はどこへやら。キノコたちも眠っているようだ。森のみんなが眠っている。起きているのは姫君ばかり。「今宵は満月だから」というのは、このことだったのだろうか。仕方なく姫君も栗鼠の腹にうずくまって目を閉じたけれど、ちっとも眠れない。
「姫。かぼちゃの姫君」
ずいぶんと威厳のある声が姫君を呼んだ。声の主は、蝶だった。
「冬の始まりを探しておられると聞いた」蝶が問う。
「そうなの。でも、栗鼠が眠ってしまって」
「ああ、栗鼠は満月の光を借りて私が眠らせた。さあ、ここからは私がお供しよう」
この蝶は、一体何者なの? 満月は何も答えない。
イラストレーション:へいじ
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