月光と、夜風と、そして晩秋が、姫君の背中を押していく。
森が終わり、まもなく夜も終わるだろう。姫君の知らない景色が広がっている。木々はなく、どこまでも遠くを見渡せる場所。
「ここが、冬の生まれる泉」
辺りには、小さな氷の粒が舞っている。キラキラと美しい。姫君の吐く息も、すぐに氷となる。
朝日が生まれるのより少し前に、冬は生まれた。
冬は、どんどん大きくなりながら空へ上がっていく。姫君が今までに見た何よりも巨大だ。かぼちゃの姫君を一瞥した冬は、背中から真っ白な蒸気を勢いよく吹き上げた。
「今年は大雪になる」
蝶が呟く。
すっかり空を覆い尽くした冬を、かぼちゃの姫君は見上げる。長い冬が始まったのだ。
イラストレーション:へいじ