川獺にもたまには怠け者がいる。この川獺親子の母がそうだ。
母は、泳げるのだが、泳ぐ気がない。
「どうせ先祖は陸上に暮らしていたのよ」と言って、なかなか獲物を獲りに行こうとはしないのだ。
そして、そんな親に育てられた子らは、当然泳げない。
しかし、この子は泳ぎを覚えたかった。そこで子らは、決意した。
泳ぎの上手い家庭に、練習に通うことにしたのだ。もちろん母川獺には内緒である。
子川獺は、つらい練習にも耐え、ようやく泳げるようになった。練習を始めたのが幾分遅かったから、苦労をした。そして、ついには獲物を捕えることもうまくできるようになった。
もっと大変だったのは、教師役の川獺である。
川獺は子を一匹づつ背中に乗せて水に馴らしてやる。毎日八匹もの子川獺に水泳練習をさせていたのだ。
ずいぶん肩が凝るな、と思っていたが、生憎、川獺は数を数えるのが苦手だから、肩こりの理由がいまいちわからない。