その沼は、肉食である。
ただし沼が喰う動物のほとんどは、飢えと渇きで死にかけているので、決して旨くはない。
ラ・ブレア・タールピット。
原本の 『鳥獸蟲魚の生態』加宮貴一著(昭和五年) には、カリフォルニアにある「松脂(アスファルト)の沼」の話として載っています。
松脂と書いて、アスファルトと読むのか……昭和初期の表記のふしぎ。
2011年11月27日日曜日
2011年11月24日木曜日
兎狩り
「兎を狩るだって? とんでもない」
と、ウサギは言う。
お気に入りの兎のぬいぐるみを口に咥えたままモゴモゴ言っているようでは、説得力がない。
ボロボロになった縫い目からこぼれた大鋸屑が大好きなことは知っている。
共食いではないのかね? それは。
と、ウサギは言う。
お気に入りの兎のぬいぐるみを口に咥えたままモゴモゴ言っているようでは、説得力がない。
ボロボロになった縫い目からこぼれた大鋸屑が大好きなことは知っている。
共食いではないのかね? それは。
2011年11月20日日曜日
蛇を恐れる動物
あるところに気の弱い蛇がいた。我々蛙が怖いのだそうだ。
蛙は食いたい。だが怖い。
あのギョロっとした目とか、ヌメっとした肌とか、オタマジャクシだったくせにとか、蛇に話を聞くとそんな言葉が返ってきた。
そっちこそ、蛇のくせに。
我々だって、好きで喰われるわけじゃないから、ヌメっとした肌をよりヌメっとさせて、ギョロっとした目を一層ギョロっとして、蛇の襲来に備えた。
けれど、残念ながら、大勢の蛇はそんなことでは怯えない。
次々と仲間が蛇に喰われる。
とうとう気の弱い蛇も我々を襲う決心をしたらしい。おずおずとこちらに向かってくる。
ギョロっと睨んだら、後ずさった(正確な表現ではない)。しかし、そのせいで、人間の子供に見つかった。
蛙も一緒だ。人間の子供の帽子に入れられた蛇と蛙は、互いの運命を慰め合う。
蛙は食いたい。だが怖い。
あのギョロっとした目とか、ヌメっとした肌とか、オタマジャクシだったくせにとか、蛇に話を聞くとそんな言葉が返ってきた。
そっちこそ、蛇のくせに。
我々だって、好きで喰われるわけじゃないから、ヌメっとした肌をよりヌメっとさせて、ギョロっとした目を一層ギョロっとして、蛇の襲来に備えた。
けれど、残念ながら、大勢の蛇はそんなことでは怯えない。
次々と仲間が蛇に喰われる。
とうとう気の弱い蛇も我々を襲う決心をしたらしい。おずおずとこちらに向かってくる。
ギョロっと睨んだら、後ずさった(正確な表現ではない)。しかし、そのせいで、人間の子供に見つかった。
蛙も一緒だ。人間の子供の帽子に入れられた蛇と蛙は、互いの運命を慰め合う。
2011年11月15日火曜日
2011年11月10日木曜日
母鳥の苦心
母親が大変なのは、どの生き物も同じで、鳥とて例外ではない。
母鳥が己の身を削って卵をあたため、雛鳥に餌をやる姿を、諸君もご存知であろう。
さて、ここに、献身的な母鳥がいる。だがしかし、幾らか度が過ぎる母鳥であった。
野生の生き物が「餌を食べ過ぎる」ということは、まず起こらないはずだが、この母鳥の子供は皆、肥満している。
かろうじて重みに耐える巣はミシミシと音を立て、非常に不安定であるから、鼬などが目をギラギラさせて狙っている。
まさに今、鼬が巣を見上げている。気づいた母鳥は、懸命に鼬を威嚇する。太った雛鳥が興奮し、一羽が墜落する。
鼬は雛鳥を咥えて去った。
母鳥は深く悲しんだ。が、残った雛への餌やりは忘れない。
そうして飛べない鳥が増えてゆく。
母鳥が己の身を削って卵をあたため、雛鳥に餌をやる姿を、諸君もご存知であろう。
さて、ここに、献身的な母鳥がいる。だがしかし、幾らか度が過ぎる母鳥であった。
野生の生き物が「餌を食べ過ぎる」ということは、まず起こらないはずだが、この母鳥の子供は皆、肥満している。
かろうじて重みに耐える巣はミシミシと音を立て、非常に不安定であるから、鼬などが目をギラギラさせて狙っている。
まさに今、鼬が巣を見上げている。気づいた母鳥は、懸命に鼬を威嚇する。太った雛鳥が興奮し、一羽が墜落する。
鼬は雛鳥を咥えて去った。
母鳥は深く悲しんだ。が、残った雛への餌やりは忘れない。
そうして飛べない鳥が増えてゆく。
2011年11月7日月曜日
川獺の水泳練習
川獺にもたまには怠け者がいる。この川獺親子の母がそうだ。
母は、泳げるのだが、泳ぐ気がない。
「どうせ先祖は陸上に暮らしていたのよ」と言って、なかなか獲物を獲りに行こうとはしないのだ。
そして、そんな親に育てられた子らは、当然泳げない。
しかし、この子は泳ぎを覚えたかった。そこで子らは、決意した。
泳ぎの上手い家庭に、練習に通うことにしたのだ。もちろん母川獺には内緒である。
子川獺は、つらい練習にも耐え、ようやく泳げるようになった。練習を始めたのが幾分遅かったから、苦労をした。そして、ついには獲物を捕えることもうまくできるようになった。
もっと大変だったのは、教師役の川獺である。
川獺は子を一匹づつ背中に乗せて水に馴らしてやる。毎日八匹もの子川獺に水泳練習をさせていたのだ。
ずいぶん肩が凝るな、と思っていたが、生憎、川獺は数を数えるのが苦手だから、肩こりの理由がいまいちわからない。
母は、泳げるのだが、泳ぐ気がない。
「どうせ先祖は陸上に暮らしていたのよ」と言って、なかなか獲物を獲りに行こうとはしないのだ。
そして、そんな親に育てられた子らは、当然泳げない。
しかし、この子は泳ぎを覚えたかった。そこで子らは、決意した。
泳ぎの上手い家庭に、練習に通うことにしたのだ。もちろん母川獺には内緒である。
子川獺は、つらい練習にも耐え、ようやく泳げるようになった。練習を始めたのが幾分遅かったから、苦労をした。そして、ついには獲物を捕えることもうまくできるようになった。
もっと大変だったのは、教師役の川獺である。
川獺は子を一匹づつ背中に乗せて水に馴らしてやる。毎日八匹もの子川獺に水泳練習をさせていたのだ。
ずいぶん肩が凝るな、と思っていたが、生憎、川獺は数を数えるのが苦手だから、肩こりの理由がいまいちわからない。
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