超短編
「もしもし」よいイチジクが手に入ったので、いとこに電話をした。「久しぶり。元気?」いとこの声もプチプチしている。「そっちもイチジク?」「そう!」互いに祖母の声に似てきたと笑い合う。季節問わず通信できるかもと、乾燥イチジクを試したこともあったがメール三文字、高確率で文字化け繧、繝√
夜の散歩にはバナナだ。手に馴染み、あたたかく光る。買ったばかりの、先が少し青いバナナが懐中電灯によい。バナナで夜道を照らして歩くと小さな生き物や、もう生きていない物がよく見える。怖くはない。だが三日月の晩は要注意。バナナが月と入れ替る。手の中のものが月だと気付いた時の恐怖たるや。
八百屋で買ってきたリンゴに穴のあいたものがあった。ちょうど鉛筆くらいの穴だったので、青の色鉛筆を突っ込んでみると、キリリと尖った。削りカスも出ない。これは素敵な鉛筆削り器だ。24色全部削ったらリンゴの穴は貫通してしまった。覗くと、青い空があった。色とりどりの雲が忙しなく流れていく。