超短編
夏空の下、サングラスを掛けて自転車に乗り、 透明な砂利の上で盛大に転びたい。
狭くて暗い地下トンネルを通るときには、親切で博学な鼠に案内を頼みたい。
ゆうらりゆゆららと不規則に揺れる耳より大きなイヤリングをぶら下げて、すれ違う人を惑わせたい。
ともかく、晴れ渡り、真っ白な雲が浮かぶ、黄色い空が見たい。
猛暑日には「氷熨斗」と呼ばれる冷たくて冷気の出るアイロンで服を伸すというクリーニング店を見学したい。
出演者無しと発表された劇場で、満員の観客席から誰が最初に舞台に上がるか固唾を呑んで見守りたい。
誰よりも小さな短冊に誰よりも小さな字で願い事を書いて、誰にも見つからないことを願いたい。
「泉-izumi-」と名付けられた財布を買ったから、お金が滾々と湧き出て欲しい。