超短編
元旦には願譚を書かずに、よく伸びる餅を食いたい。
かつて蓮根の穴に暮らしていたという人に詳しく話を聞きたい。
木の葉一枚で重たい荷物を運んでくれる善良な狸を雇いたい。
早口の人の背中に「0.75倍速」のボタンを付けたい。
対角線を伸ばして伸ばして、チクリと刺さった人に会いたい。
夢見る釘を水晶に打ち込んで、霧の向こうを覗き見したい。
雨のち晴れの日に忘れられた傘を集めて、愚痴を聞きたい。
はらぺこの帰り道、こんがりおいしそうなものばかり思い浮かぶ――焼きたてパン・鯛焼き・焼き芋――でも、夕焼けが一番おいしそうだから、いますぐ食べたい。
おいしい胡麻団子には胡麻の数が大切だという噂を聞いたので、胡麻団子を食べる時には胡麻の数を数えたい。
冷たい雲を冷蔵保存して夏空にプレゼントするよう、冬空に頼みたい。