鳥の母子は、意思を疎通し合うのだろうか。意思の疎通があれば、きっと雛は母に抗議しているであろう、とっくの昔に。
この鳥籠の中で繰り広げられる、母から子への、間断なき餌やり。
太った雛は時折、こちらに濁った目を向けて懇願する様子を見せるが、私の哀れみがそう思わせるだけで、実際のところ雛は何も思っていないのかもしれない。
鳥籠の扉を開け放ってやりたい衝動に駆られるが、扉を開けたところでこの肥満した小鳥は飛び立つことができないだろう。
そもそも、私自身が囚われの身なのだ。小さな窓の外では何が起きているのか、わからない。
母鳥は、せっせと雛に餌を与え続けている。私はそれを飽きずに見ている。他に見るものがない。
2011年12月25日日曜日
薄明のメロディー
お酒を飲むと、ふわふわとよい心持ちになる人は多いと思うが、本当にふわふわと宙を歩く人は、なかなかいないものだ。
私の友人のバカリーは、コルネット吹きのやさしい男だ。いつもにこにことしているから、年寄りや子供や猫によく声を掛けられる。
彼も私も酒が好きで、機会をみては二人で飲みに出掛ける。しゃべるのは私ばかりで、バカリーはもっぱら聞き役だ。
もちろんたまにはバカリーも話をする。いつも決まって、尻尾を切られた黒猫と女の子の思い出話だ。女の子は、もうすっかりきれいな娘になっているらしい。
すっかり語り合って薄明、彼は顔を赤く染め(それは酔った男というよりも、恥らう少年のようなのだ)、「今夜は素敵だった。ありがとな」と言って、そのまま空中散歩に出かけてしまう。
「おーい、バカリー、落っこちるなよ!」
私は空に叫んで、千鳥足で家に向かう。
だんだんと明るくなる町を、バカリーの奏でるコルネットが祝うのだ。
コルネット吹きのチョット・バカリーは、四千四秒物語に出てきます。
私の友人のバカリーは、コルネット吹きのやさしい男だ。いつもにこにことしているから、年寄りや子供や猫によく声を掛けられる。
彼も私も酒が好きで、機会をみては二人で飲みに出掛ける。しゃべるのは私ばかりで、バカリーはもっぱら聞き役だ。
もちろんたまにはバカリーも話をする。いつも決まって、尻尾を切られた黒猫と女の子の思い出話だ。女の子は、もうすっかりきれいな娘になっているらしい。
すっかり語り合って薄明、彼は顔を赤く染め(それは酔った男というよりも、恥らう少年のようなのだ)、「今夜は素敵だった。ありがとな」と言って、そのまま空中散歩に出かけてしまう。
「おーい、バカリー、落っこちるなよ!」
私は空に叫んで、千鳥足で家に向かう。
だんだんと明るくなる町を、バカリーの奏でるコルネットが祝うのだ。
コルネット吹きのチョット・バカリーは、四千四秒物語に出てきます。
2011年12月20日火曜日
2011年12月15日木曜日
2011年12月12日月曜日
十年ひと昔
「しっぽを切られたのもずいぶん前の話だ」
黒猫はひとりごち、傍らのキナリを見上げた。キナリはもう少女ではない。
「もうオジサンね、ヌバタマも」
そう、十年前のこの季節、この公園で月と少女に見つかったのだ。
しっぽを切られ、人語を操った。
しばしの時を経て、しっぽは戻り、黒猫は人語を話さなくなったが、それでもやはり月とキナリの傍にいる。
「黒猫もヒゲが白髪になったりするの?」
と、いたずらっぽく笑うキナリは、相変わらずだ。
月はブランコで寝ている。この間の月蝕で、疲れたらしい。
あの夜は、黒猫のエメラルド色の瞳が、一瞬だけルビー色になった。
+++++++++++++++++++
「瓢箪漂流」は2001年12月12日に開設し、本日十周年を迎えました。
月食の夜は、流れ星をひとつ見ました。
黒猫はひとりごち、傍らのキナリを見上げた。キナリはもう少女ではない。
「もうオジサンね、ヌバタマも」
そう、十年前のこの季節、この公園で月と少女に見つかったのだ。
しっぽを切られ、人語を操った。
しばしの時を経て、しっぽは戻り、黒猫は人語を話さなくなったが、それでもやはり月とキナリの傍にいる。
「黒猫もヒゲが白髪になったりするの?」
と、いたずらっぽく笑うキナリは、相変わらずだ。
月はブランコで寝ている。この間の月蝕で、疲れたらしい。
あの夜は、黒猫のエメラルド色の瞳が、一瞬だけルビー色になった。
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「瓢箪漂流」は2001年12月12日に開設し、本日十周年を迎えました。
月食の夜は、流れ星をひとつ見ました。
2011年12月9日金曜日
2011年12月2日金曜日
魚捕りの名人川獺とずるい狐
どうしても、川獺は褒められると弱いのだ。
何が情けないって、狐のお世辞や煽てに騙されること。
浮かれた隙に捕まえたばかりの魚を盗まれるのだ。
川獺は友達にも聞いてみた。やっぱり、褒められると盗まれるという。
「今度は狐をわざと褒めてみようかしら」と川獺は思っている。
「嘘でも褒められたら、あの狐もきっと照れるだろう。照れたら盗むのを忘れるかもしれないよ」
とてもよい思いつきだ、と川獺は思った。
川獺は嘘が苦手だということをまだ自覚していない。
何が情けないって、狐のお世辞や煽てに騙されること。
浮かれた隙に捕まえたばかりの魚を盗まれるのだ。
川獺は友達にも聞いてみた。やっぱり、褒められると盗まれるという。
「今度は狐をわざと褒めてみようかしら」と川獺は思っている。
「嘘でも褒められたら、あの狐もきっと照れるだろう。照れたら盗むのを忘れるかもしれないよ」
とてもよい思いつきだ、と川獺は思った。
川獺は嘘が苦手だということをまだ自覚していない。